石油・天然ガス業界の全体像を解説!エネルギー供給の広がりを探ろう
機械電気学生の就職先は多岐にわたるため、石油・天然ガス業界の具体的な事業内容まで理解して選択肢に入っている学生はあまり多くはないと思います。
しかし、石油・天然ガス業界は業界規模の大きいことや、活かせる専攻分野の幅が広く、様々な機械電気学生が活躍できることなどの魅力があります。
本記事では、業界規模が大きく魅力も多い石油・天然ガス業界について概要から事業内容、職種までわかりやすく解説します。
石油・天然ガス業界の属する資源関連業界については「モノづくりの原点?様々な材料を社会に供給している資源業界とは」で解説しています。石油・天然ガス業界の他にも鉱業、鉄鋼、非鉄金属など広く概要をご説明していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
石油・天然ガス業界とは
石油・天然ガス業界とは化石燃料である石油・天然ガス及び、石油を基にした製品である石油誘導品、基礎化学品を取り扱う業界です。
石油・天然ガス業界の事業は大きく上流・中流・下流に分けることができます。
上流は油田の探査や採掘を行う資源開発、中流は原油や天然ガスから不純物を取り除く精製分離、下流は石油・石油誘導品、天然ガスを供給販売する卸売りを行います。
これらの三つの工程のうち、どの領域を行っているかは企業によって異なり、石油開発の専業や石油卸売を専業している企業などがあります。
資源開発
石油・天然ガスの資源開発の流れはどちらも共通しており、まず、石油・天然ガスの産出する油田・ガス田の賦存する地域を探します。次に、その地域の権益を取得し、品位や埋蔵量の調査をします。
その後、採算性を検討して開発計画を策定したのち、掘削及び処理・運搬等の稼働に必要な諸施設を建設します。これらの設備が正しく稼働することで安定して資源を採掘しています。
化石燃料の自給率はおよそ1%程度であり、消費量の多くを海外から輸入しています。そのため、石油・天然ガスを開発する企業も基本的に中東をはじめとする海外の油田・ガス田を開発し、日本へ輸送します。
精製分離
石油と天然ガスは資源開発の流れは共通していますが以降の流れが大きく異なります。精製分離を含め、それぞれの事業や流通について詳しく説明します。
天然ガスの流通
天然ガスの流通を以下の図にまとめました。
高圧セパレーター、除去装置、冷凍装置等を用いて精製分離を行い、天然ガスの純度を高めつつ液化して、LNG(液化天然ガス)にして輸送します。これらの精製分離を天然ガスは採掘拠点で行ってから輸送します。
石油の流通
石油の流通を以下の図にまとめました。
石油(原油)は採掘したのち、国内の沿岸部にある石油化学コンビナートと呼ばれる工場群に輸送され、精製分離されます。
石油(原油)は天然ガスと比較して、精製分離時に様々な副産物(アスファルト・基礎化学品・石油誘導品等)を生成することができます。そのため、国内の沿岸部に石油関連企業が相互の生産性向上のために石油化学コンビナートと呼ばれる工場群・工業地帯を築き、効率的に産業活動を行っています。
具体的には、石油精製プラント、ナフサ分解工場、石油化学誘導品工場、火力発電所、ガス工場、その他関連工場が集まっています。
石油精製プラントで蒸留により各成分に分離され、LPガス、ガソリンなどは用途に合わせて、需要家のもとへ届けられます。
分離成分のうちのナフサと呼ばれる炭化水素混合物は同コンビナート内にあるナフサ分解工場へ送られ、化学製品の原料となるエチレン、プロピレン等の様々な構造をとる炭化水素系の基礎化学品に分離されます。これらの基礎化学品は石油誘導品工場に送られ、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム等の化学製品に加工されます。
このように、石油(原油)はエネルギー燃料としての用途だけでなく、化学製品の原料としての側面も持ちます。後者の石油を基に展開する化学産業は石油化学または石油化学工業と呼ばれています。
これらの石油化学の更に下流にはプラスチック加工業や繊維工業、ゴム工業などが続き、完成品としては自動車や電気機器、建材、衣類、日用品などの幅広い製品に使われています。
卸売り
石油業界の下流に位置する石油・天然ガスの卸売りについて詳しく説明します。
ENEOSなどの大手石油元売り会社は石油の精製分離から石油製品の卸売りまで行っています。自動車向けの販売ではガソリンスタンドを設けて、レギュラーガソリン・ハイオクガソリン・軽油の販売をしています。
家庭用や事業用に使われるガス燃料には都市ガスとLPガスがあり、東京ガスなどのガス事業者が卸売から購入し、供給・販売を行います。
都市ガス(LNG)はガス事業者の持つパイプライン網を通じて供給されます。
LPガスはガスが充填されたガスボンベを各需要場所に設置することで供給されます。
化石燃料の概要及び展望
石油・天然ガス業界が扱うものの中でも、環境問題や資源問題で度々話題に上がる化石燃料について改めて詳細にご説明します。
化石燃料の概要
化石燃料とは、動植物などの死骸が地中深くに埋まり、長い年月の中で土圧や地熱の影響を受けて変成したものです。
代表的な化石燃料である石油、天然ガス、石炭について簡単にご紹介します。
・石油:地中から産出する液体燃料のことを指し、精製して燃料として利用される前の石油は原油とも呼ばれます
・天然ガス:地中から産出する気体(ガス)燃料のことを指します。
・石炭:地中から産出する炭素分の豊富な岩石状の燃料のことを指します
これらの化石燃料が排出し、地球温暖化の原因となる二酸化炭素及び酸性雨の原因となる硫黄酸化物・窒素酸化物の排出量は、石炭>石油>天然ガスの順で少なくなっており、天然ガスは比較的環境負荷の少ない資源です。
また、石炭は石油や天然ガスに比べると、固体であるため運搬コストも高く体積あたりの発熱量も少ないため、あまり利用されていませんでした。
しかし、現在原油価格の上昇もあって石炭の利用も見直されてきています。
今の技術で掘り出すことができるエネルギー資源を、今と同じペースで使っていくと、石炭が約120年分、石油が約40年分、天然ガスが約60年分で尽きるといわれており、新たなエネルギー資源の創出が期待されています。
化石燃料の活用
石炭は火力発電、一般産業のボイラ燃料、セメント製造などに利用されます。
石油(原油)は精製分離によりガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などに分解でき、LPガス、火力発電、輸送機械の動力、プラスチック・化学繊維の原料などに利用されます。
天然ガスは-162℃まで冷やすことでLNG(液化天然ガス)にして都市ガス、火力発電などに利用されます。
日本の化石燃料
化石燃料である石油及び天然ガスは地下の油田及びガス田から採掘されます。油分が多い鉱床を油田、ガス分が多い鉱床をガス田、油ガス両方の場合は油ガス田と呼ばれます。
日本国内に油田やガス田は存在しますが、大規模なガス田は南関東ガス田のみであり、油田は小規模なものしかなく、生産量は国内消費量の1%未満であり、消費量のほとんどを中東などから輸入しています。

石油・天然ガス業界の職種
石油・天然ガス業界は資源開発、精製分離、卸売りなど事業の工程が広く、企業の事業領域によって職種も大きく異なります。そのため、正確な職種については企業のホームページをご覧ください。ここでは石油業界の主要な技術職種を一部紹介します。
研究開発
石油・天然ガス及び石油誘導品・基礎化学品の製造や応用に関する研究開発を行います。いくつもの領域に細分化されており、資源開発や精製分離技術、石油製品関連、生産プロセスの最適化・効率化やエネルギー関連など様々な研究があります。
そのため、様々な分野からの研究アプローチをしており、化学、物理、機械、機械、電気電子、土木・建築、情報など理系全般の専攻分野の学生が必要とされています。
機械系では、圧延機や搬送装置といった大型設備の構造設計・耐久性向上、高温環境における熱流体解析や冷却技術の研究、さらにはメンテナンス効率を高める設備診断技術の開発などが行われています。
電気電子系では、工場全体を支える電力供給システムの安定化、圧延ラインや搬送ラインのモーター制御や自動化技術の高度化、センサーやICTを活用したスマート工場化の研究などが進められています。
プロセスエンジニア
石油・天然ガス、石油誘導品、基礎化学品などの製品に関する研究成果を製造プラントで実現するためのプロセス開発を行います。石油化学や化学工学、工業化技術に至るまで、化学をはじめとした幅広い分野の知識が求められます。
製造プラントのプロセス構築・改良を通した温室効果ガス削減や操業の効率化、品質改善等にも取り組みます。
設備エンジニア
石油・天然ガス業界は資源開発や精製分離などのプロセスで大量の設備を必要とする装置産業であるため、安定操業にはプラント設備が正しく稼働し続ける必要があります。設備エンジニアはプラントの検査、設計、新設、補修などを担当します。
プロセスエンジニアと連携し、多種多様なプラント及び生産プロセスを実現して安定操業や品質向上、効率化に貢献します。プラント設備の立ち上げや維持管理には機械、電気電子、土木建築のエンジニアが必要となります。
石油・天然ガス業界のおすすめのポイント
石油・天然ガス業界のおすすめのポイントをご紹介します。
業界規模が大きい
就活生にとって企業の安定性や将来性を計る上で属する業界の規模というのは重要な要素の1つです。その点で石油・天然ガス業界は国内、海外の油田・ガス田の資源開発や石油化学コンビナートの操業、エネルギー燃料・石油製品の卸売りなど事業領域が大きいです。
また、発電所、事業用・家庭用、輸送機械などのエネルギー燃料やプラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料原料等の化学系メーカー向けの基礎化学品など製品の需要及び市場も大きいです。
大量の設備を必要とするため、多額の設備投資や大量生産、大量販売しており、従業員数、設備投資額、売上高が多く、企業の規模も大きくなる傾向にあります。そのため、それらが構成する業界も他の業界と比較して大きいです。
幅広い専攻分野の学生が活躍できる
石油・天然ガス業界は大量の設備を扱う装置産業であるため、設備の立ち上げや維持管理には機械系や電気電子系の専門知識が欠かせません。
例えば、機械系ではタービンや圧縮機、配管システムなどの設計・保守、流体や熱に関する解析技術が活かされます。電気電子系では発電・受配電設備の設計や運用、大型モーターや制御システムの高度化、さらにはセンサーや自動化技術の応用が重要な役割を果たしています。
また、研究開発やプロセス改善の領域でも機械工学や制御工学、電力工学、情報通信工学などの知識が活用され、設備の効率化や省エネルギー化、安全性向上の取り組みに直結しています。
このように石油・天然ガス業界は事業領域が広いため、機械・電気のさまざまな専攻分野の学生がそれぞれの強みを発揮できる業界だといえます。
まとめ
石油・天然ガス業界の概要から事業内容や職種、おすすめのポイントまでご説明しました。石油・天然ガス業界は非常に業界として大きく、資源開発専業や卸売りの企業、石油化学関連企業など企業数も多いため、より興味のある事業領域に絞って企業研究することをお勧めします。
石油・天然ガス業界の属する資源関連業界については「モノづくりの原点?様々な材料を社会に供給している資源業界とは」で解説しています。石油・天然ガス業界の他にも鉱業、鉄鋼、非鉄金属など広く概要をご説明していますので、資源業界に興味を持った方はぜひご覧ください。
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